利用成果

化合物提供等支援実績の推移

Streptococcus属細菌のQuorum-sensing阻害剤の探索

利用者 大阪医科大学
生化学教室
石井誠志先生
内容 Quorum-sensingは細菌に広く存在する細胞間情報伝達経路で、細菌が様々な環境変化に適応し生存するために必要な遺伝子群の発現を制御している。ComABCDE pathwayはStreptococcus属細菌のQuorum-sensing伝達経路で、Competence(外来DNAの取りこみや組換え)やバイオフィルム形成などに主要な役割を果たすことが知られている。これまでにComABCDE pathwayの各componentの遺伝子を欠失した株では、バイオフィルム形成に異常が見られる事が報告されている。したがって、この経路に対する阻害剤を開発すれば、Streptococcus属細菌が起因する感染性心内膜炎などの難治性バイオフィルム感染症の治療薬として役立つことが期待される。とりわけこの経路の初発段階で機能するComA(ABCトランスポーター)のペプチダーゼドメイン(PEP)は細菌に特有のタンパク質で創薬標的分子として適している。
本研究では、まず蛍光基質ペプチドを作成し、PEPを阻害する低分子化合物を探索するHigh-throughputスクリーニング系を開発した。この系を用いて16万5千化合物を含むライブラリー(東京大学 創薬機構)からミュータンス菌のPEPに対する阻害剤を見出した。その類縁化合物からCompound 1(Ki = 38 μM)を見出した。この化合物はPEP活性を阻害することでQuorum-sensing伝達経路を攪乱し、ミュータンス菌のバイオフィルム形成(EC50 = 5 μM)ならびにCompetenceを抑制する。また、X線結晶構造解析からCompound 1の類縁体が、PEPに新たに見つかったアロステリック部位に結合することが明らかとなった。PEPのアロステリック部位は触媒反応の進行に伴って構造変化をすると考えられ、おそらくCompound 1はこの構造変化を妨げることでPEPの活性を阻害するものと推測される。さらに本研究ではCompound 1が他のStreptococcus属細菌のComAに由来するPEPも阻害する事を示した。この結果は、一つの薬剤で臨床上問題となるミュータンス菌や肺炎球菌をはじめとする複数のStreptococcus属細菌のQuorum-sensingを阻害する方法の開発が可能であることを示唆する。
成果掲載誌 High-throughput Screening of Small Molecule Inhibitors of the Streptococcus Quorum-sensing Signal Pathway
Seiji Ishii, Kenji Fukui, Satoshi Yokoshima, Kazuo Kumagai, Youko Beniyama, Tetsuya Kodama, Tohru Fukuyama, Takayoshi Okabe, Tetsuo Nagano, Hirotatsu Kojima and Takato Yano
Scientific Reports 7, 4029 (2017)
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Ishii_compound

P2Y6受容体阻害剤の探索

利用者 高崎健康福祉大学
薬学部
伊藤政明先生
内容 アデノシン三リン酸(ATP)は生体におけるエネルギー物質として重要であることは広く知られております。一方で、このATP、UTPをはじめとするヌクレオチドは病態や機械的刺激などの様々なストレスにより細胞外に放出され、プリン受容体を介して多様な生理応答を引き起こします。なかでもウリジン二リン酸(UDP)を内因性アゴニストとするP2Y6受容体は、気管支喘息や炎症性腸疾患などの炎症応答を基盤とする病態との因果関係が示唆されています。したがって、その受容体機能の調節は創薬の標的として有用であると考えられていますが、未だ治療薬の開発には至っておりません。
本研究では、ヒトP2Y6受容体に作用する新規低分子化合物を探索するために東京大学創薬機構が所有する化合物ライブラリーより提供を受けた141,700化合物を対象にハイスループットスクリーニングを行い、ヒトP2Y6受容体に選択的な阻害物質群の同定に成功しました。この化合物群は、既存の非特異的な阻害剤と比較して、新しい骨格を有し受容体選択性も高く、阻害活性も同等以上でした。以上より、今回同定した化合物群はP2Y6受容体生理機能の解明を推進するツールとして、また同受容体が関与する疾患に対する治療薬開発のリード化合物として有用であると期待されます。
成果掲載誌 Identification of novel selective P2Y6 receptor antagonists by high-throughput screening assay
Masaaki Ito, Shin-ichiro Egashira, Kazuki Yoshida, Tomoko Mineno, Kazuo Kumagai, Hirotatsu Kojima, Takayoshi Okabe, Tetsuo Nagano, Michio Ui, Isao Matsuoka
Life Sci. 180, 137-142 (2017)
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02930_00102930_002

カイコを用いた黄色ブドウ球菌に対する新規抗菌薬の探索

利用者 株式会社ゲノム創薬研究所
関水和久様
内容 カイコ細菌感染モデルを用いて治療効果を指標とした新規抗菌薬の探索を行った。その結果、Spiro-heterocyclic化合物がカイコの黄色ブドウ球菌感染モデルで治療効果があるものと見いだされた。その化合物の機序を解析したところ、RNA polymeraseのσ因子に作用してRNA合成を阻害していると考えられた。また、本化合物はマウスの全身感染モデルにおいて延命効果を示した。
成果掲載誌 A Novel Spiro-Heterocyclic Compound Identified by the Silkworm Infection Model Inhibits Transcription in Staphylococcus aureus
Atmika Paudel, Hiroshi Hamamoto, Suresh Panthee, Keiichi Kaneko, Shigeki Matsunaga, Motomu Kanai, Yutaka Suzuki and Kazuhisa Sekimizu
Frontiers in Microbiology 8, 712 (2017)
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GPI0363

Nucleoproteinを標的とするインフルエンザウイルス複製阻害剤探索

利用者 理化学研究所
間 陽子先生
内容 現在インフルエンザ治療薬としてM2チャネル阻害剤とノイラミニダーゼ阻害剤の2つが主に用いられている。しかしながら、これら治療薬に対して耐性のインフルエンザの発生が知られており、新たなターゲットをもつ治療薬の開発が望まれている。我々は以前に、新たなインフルエンザ治療薬としてインフルエンザウイルス複製に重要なNucleoprotein (NP)を標的とした薬剤スクリーニングを行い、東京大学創薬機構コアライブラリー9,600化合物の中から新規インフルエンザ治療薬候補化合物DP2392-E10を取得している。
本研究では、このDP2392-E10の示したインフルエンザウイルス複製阻害能について詳細の解析を行い、ウイルス複製阻害機構を解明した。
まずDP2392-E10は様々なA型インフルエンザウイルス株に対して複製阻害作用を示すことを明らかにした。また、この化合物は細胞内の核外輸送タンパク質CRM-1に直接結合することで、インフルエンザNPの核外移行を阻害することを明らかにした。そこで、コンピューターシミュレーションによりDP2392-E10のCRM-1への結合部位を解析した結果、CRM-1のHEAT9およびHEAT10と呼ばれる構造に隣接した領域に結合ポケットがあることが示唆された。これらの結果からCRM-1を介するインフルエンザウイルスの核外移行機構はインフルエンザ治療薬の新たなターゲットであり、DP2392-E10を基本構造とした新規治療薬開発が望まれる。
成果掲載誌 Inhibition of CRM1-mediated nuclear export of influenza A nucleoprotein and nuclear export protein as a novel target for antiviral drug development
Nopporn Chutiwitoonchai, Takafumi Mano, Michinori Kakisaka, Hirotaka Sato, Yasumitsu Kondoh, Hiroyuki Osada, Osamu Kotani, Masaru Yokoyama, Hironori Sato, Yoko Aida
Virology 507, 32-39 (2017)
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DP2392-E10

G0s2の発現抑制による抗炎症剤の同定

利用者 九州大学
大学院薬学研究院
大戸茂弘先生
内容 ヒトを始めとする地球上の多くの生物には約24時間を1周期とする概日リズムが認められる。これら概日リズムは時計遺伝子と呼ばれる転写因子群の転写翻訳フィードバックループによって厳密に制御され、酵素、受容体、トランスポーターなどの様々な機能性タンパク質の発現に概日リズムを生じさせている。よってこれら概日リズムが薬の効果や副作用の発現に影響を与えることから、至適投薬時刻を設定することは効果の増強また副作用の軽減に繋がる。また最近の研究成果より、時計遺伝子は様々な病気の発症や症状に影響を与えることが示唆されていることから、これらの分子機構は臨床および基礎研究においても注目されている。
リウマチなど自己免疫疾患をはじめ、癌、メタボリックシンドロームなど様々な病態に炎症が認められる。これら炎症は概日時計機構と密接な関連が認められ、近年の報告では炎症に伴う様々な反応は時計遺伝子により転写レベルで制御されていることが示唆されている。
そこで我々は、概日時計機構を基盤として炎症の新たな分子の探索を行った。その結果、炎症性サイトカインの概日リズム形成にG0/G1 switch gene 2(G0s2)が関与していることを明らかにした。またG0s2の発現を抑制する化合物を同定するために東京大学 創薬機構が所有するコアライブラリーより提供を受けた9,600化合物を対象にハイスループットスクリーニングを行い、G0s2の発現を抑制し炎症を抑制する新たな機構の抗炎症化合物の同定に成功した。また現在、同定した化合物を基にして、より効果の強い化合物の合成および同定に成功している。
成果掲載誌 Inhibition of G0/G1 Switch 2 Ameliorates Renal Inflammation in Chronic Kidney Disease
Naoya Matsunaga et al.
EBioMedicine 13, 262-273 (2016)
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NS-3-008

上皮間葉転換阻害剤の発見

利用者 ORGANOGENIX株式会社
事業部
新井一也様
内容 Epitherial-Mesenchymal transition(EMT)は癌の転移および悪性化において重要なイベントである。癌細胞は、周囲の間質細胞からTransforming growth factor(TGF) 等のサイトカインによるEMT刺激を受け取ることにより、細胞間接着の減少および運動・浸潤能の亢進の結果、転移能を獲得するに至る。このことからEMT阻害剤は癌の転移および悪性化を抑制することが期待されている。従来までのEMT阻害剤探索の方法は、EMT分子マーカーの発現量や細胞の遊走性・浸潤性を評価する、スループットの低い煩雑なものであった。そこで我々はスフェロイドの形態変化を評価する新規ハイスループットスクリーニング系を開発し、東京大学創薬機構より提供を受けた1330化合物からEMT阻害活性を持つ化合物のパイロットスクリーニングを行った。
一次スクリーニングではTGF-β1型受容体であるSB-525334を含む4つの候補化合物が選択された。EMTの阻害能について濃度依存性を検討する二次スクリーニングによりCDK2阻害剤であるSU 9516がEMT阻害剤の候補化合物として選択された。さらにSU 9516はEMT誘導によるスフェロイド/細胞形態の変化およびE-cadherin発現減少を阻害することが確認された。これらの結果から、開発されたシステムはEMT阻害剤候補物質のより簡便かつ高いスループットなスクリーニングを可能とすることが期待される。
成果掲載誌 A Novel High-Throughput3D Screening System for EMT Inhibitors: A Pilot Screening Discovered the EMT Inhibitory Activity of CDK2 Inhibitor SU9516
Kazuya Arai, Takanori Eguchi, M. Mamunur Rahman, Ruriko Sakamoto, Norio Masuda, Tetsuya Nakatsura, Stuart K. Calderwood, Ken-ichi Kozaki, Manabu Itoh.
PLoS ONE 11(9): e0162394 (2016)
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02548_001
02548_002
02548_003
02548_004g

植物成長調節剤の発見

利用者 秋田県立大学
応用生物科学科
王敬銘先生
内容 ガス状の植物ホルモンエチレン(C2H4)は、植物の発芽、芽生えの成長、果実の成熟、葉の老化、環境ストレスへの応答、病原体への防御など様々な生理プロセスにおいて中心的な役割を担うことが知られている。エチレンが植物の成長制御や病原体への防御機能を示すことから、農業生産におけるその利用が注目され、基礎・応用両面の研究が盛んに行われてきた。しかし、実際使用できる薬剤は極めて限られている。この分野では生物活性本体であるエチレンが気体である難点があり、野外栽培作物にエチレンの散布は困難である。そのため、エチレン活性の持続性が長く、散布容易な非ガス形エチレン活性物質の開発は望まれている。
本研究では、エチレン活性を示す化合物を探索するため、エチレン処理により特異的に誘導される植物の「三重反応」形態を指標に、貴組織のコアライブラリーを鋭意探索した結果、非ガス形で植物の「三重反応」を誘導する化合物を見出した。
成果公表 特開2016-164151
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01830

抗トリパノソーマ剤シード化合物の発見

利用者 富山大学
大学院医学薬学研究部
今中常雄先生
内容 原虫トリパノソーマは重篤な熱帯感染症を引き起こすが、未だ有効な治療薬は存在しない。トリパノソーマには、グリコソームという原虫特有のオルガネラが存在し、解糖系によるATP産生の場としてその生存・増殖に必須である。グリコソームの形成機構は哺乳動物ペルオキシソームの形成機構と類似しており、マトリックスタンパク質の局在化にはPex5pとPex14pの相互作用を必要とする。よってこの相互作用を原虫選択的に阻害する化合物は原虫感染症治療薬のシーズとなり得る。本研究では、トリパノソーマPex5p-Pex14p間相互作用の阻害を評価するため、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を応用したハイスループットアッセイ系を構築し、新規治療薬候補化合物の探索を行った。Pex5p-His、GST-Pex14pは、大腸菌に発現させ、精製した。1次スクリーニングでは、両タンパク質を混合し、蛍光物質テルビウムクリプテート(ドナー)、FITC(アクセプター)でそれぞれ標識した抗GST抗体、抗His抗体と反応させた。タンパク質間相互作用は、337 nmの波長で励起されたドナーの蛍光波長(490nm)がアクセプターへとシフトすることで発生する蛍光波長(520 nm)の増減をFRET値として評価した。2次スクリーニングでは、トリパノソーマ及びヒトPex5p-Pex14p間相互作用の阻害をpull down assayにより評価した。ハイスループットアッセイに用いるPex5p-His、GST-Pex14pの最適濃度を決定し、化合物溶媒に用いるDMSOのassay系への影響を検討した。20,800種類の化合物を対象に1次スクリーニングを行った。その結果、コントロールのFRET値から標準偏差の3倍以上の阻害率を示す化合物139種類を見出だし、さらにn=4で再度検証し、平均阻害率が20%以上の化合物11種類に絞りこんだ。この11化合物を対象に行った2次スクリーニングの結果、トリパノソーマPex5p-TbPex14p間相互作用を選択的に阻害する化合物を1種類見出した。本化合物はトリパノソーマ感染症治療薬のシード化合物となることが期待される。この成果を、以下の論文に発表した。
成果掲載誌 An HTRF based high-throughput screening for discovering chemical compounds that inhibit the interaction between Trypanosoma brucei Pex5p and Pex14p
Yuichi Watanabe, Kosuke Kawaguchi, Syuken Saito, Takayoshi Okabe, Kiyoaki Yonesu, Shinichiro Egashira, Masafumi Kameya, Masashi Morita, Yoshinori Kashiwayama, Tsuneo Imanaka.
Biochem Biophys Rep. 6, 260-265, (2016)
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compound_i

インフルエンザ治療薬開発を目指すNP-NES3阻害剤

利用者 理化学研究所
分子ウイルス学特別研究ユニット
間 陽子先生
内容 現在インフルエンザ治療薬としてM2チャネル阻害剤とノイラミニダーゼ阻害剤の2つが主に用いられている。しかしながら、これら治療薬に対して耐性のインフルエンザの発生が知られており、新たなターゲットをもつ治療薬の開発が望まれている。我々はこれまでにインフルエンザのNucleoprotein (NP)タンパク質に存在する核外移行シグナル3 (NP-NES3)が、ウイルスの増殖に重要な役割を果たしていることを明らかにしており、今回新たなインフルエンザ治療薬のターゲットとしてNP-NES3の機能を阻害する薬剤を取得する新規ハイスループットスクリーニング法を開発した。まずインフルエンザNP-NES3の遺伝子配列を蛍光タンパク質(GFP)に結合したAcGFP-NP-NES3タンパク質を細胞内で恒常的に発現する安定細胞株を樹立した。そこに東京大学創薬機構コアライブラリーより提供を受けた9,600化合物をそれぞれ添加した結果、NP-NES3を持つ蛍光タンパク質の核外への移行が阻害され、核のGFP蛍光強度が高くなる化合物を取得することに成功した。これら化合物についてさらに細胞毒性試験、インフルエンザウイルス複製阻害試験を行い、最終的に核外移行阻害能を示し、低毒性でインフルエンザウイルス複製阻害能を持つ化合物DP2392-E10を同定することができた。これにより、この新たなスクリーニング法を用いることで、NP-NES3を標的とした新規治療薬の開発が可能となったことが示された。
成果掲載誌 A high-throughput screening system targeting the nuclear export pathway via the third nuclear export signal of influenza A virus nucleoprotein.
Michinori Kakisaka, Takafumi Mano, Yoko Aida
Virus Res. 217:23-31 (2016).
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Aida_etal01
Aida_etal02
Aida_etal03
Aida_etal04
Aida_etal05
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ジアシルグリセロールキナーゼα阻害化合物の発見

利用者 千葉大学
大学院理学研究院
坂根郁夫先生
内容 従来の抗がん剤である化学療法剤は、あらゆる細胞に発現している細胞増殖機構を制御するため、正常細胞の増殖も抑制する。特に、骨髄細胞の分化増殖能を低下させ免疫系の不全をもたらすことが臨床において問題となる。近年増加している分子標的治療薬も、その薬物の標的蛋白は正常細胞においても発現しているため、臨床では特有の副作用が生じることが知られている。ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)のαアイソザイム(DGKα)は悪性黒色腫や肝細胞がんの増殖を亢進するが、Tリンパ球では逆に増殖停止・不活性化(anergy)へ誘導する。従って、DGKαを阻害する薬剤は、直接がん細胞死を誘導し、かつ、Tリンパ球を活性化することでがん免疫亢進作用によるがん細胞死滅が期待でき、理想的・画期的な抗がん剤となると考えられる。そこで、DGKα阻害化合物を、最近開発したハイスループットスクリーニング系を用い、東京大学創薬機構の化合物ライブラリーをスクリーニングしてDGKαを特異的かつ効果的に阻害する化合物を1種類(CU-3)得た。本化合物は実際にがん細胞の死滅を誘導し、Tリンパ球を活性化した。今後更に最適化研究を行い、画期的な次世代抗がん剤の早期開発を目指す。
成果掲載誌 A novel diacylglycerol kinase α-selective inhibitor, CU-3, induces cancer cell apoptosis and enhances immune response
Ke Liu, Naoko Kunii, Megumi Sakuma, Atsumi Yamaki, Satoru Mizuno, Mayu Sato, Hiromichi Sakai, Sayaka Kado, Kazuo Kumagai, Hirotatsu Kojima, Takayoshi Okabe, Tetsuo Nagano, Yasuhito Shirai, and Fumio Sakane.
J. Lipid Res. 57:(3) 368-379, (2016)
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CU-3

クマムシの乾眠回復を阻害する化合物

利用者 東京大学
大学院理学系研究科生物科学
國枝武和先生
内容 クマムシは独自の緩歩動物門を構成する体長1mm以下の微小動物であり、約1000種が記載されている。基本的に水中に生息する水生生物であるが、コケ上の水膜や土壌の間隙水などに生息する一部の種は、周辺環境の乾燥に伴い、ほぼ完全に脱水し「乾眠」と呼ばれる無代謝状態に移行することで乾燥環境に耐えることができ、給水により生命活動を再開する。ヤマクマムシ(Hypsibius dujardini)はゆっくりと時間をかけて乾燥することではじめて乾眠状態に移行できることから、この種ではゆっくりとした乾燥中に外界の乾燥を感知して乾眠の準備を行う機構が存在すると考えられるが、その分子機構は全く分かっていなかった。今回我々は、東京大学創薬機構から提供を受けた活性既知化合物81種を用いてヤマクマムシの乾眠を阻害する化合物を探索した結果、乾眠後の回復率を顕著に阻害する5種の化合物を同定した。中でもprotein phosphatase (PP) 1/PP2Aの阻害剤であるcantharidic acidは他の化合物よりも強い阻害作用を示した。別種のPP1/PP2A選択的阻害剤であるokadaic acidを用いた場合も乾眠後の回復率を特異的に阻害したことから、PP1/PP2Aの活性がヤマクマムシの乾眠移行に必要であることを初めて示唆した。今回同定した化合物は、クマムシの乾眠を制御する分子機構を解明するための強力なツールになることが期待される。
成果掲載誌 Suggested Involvement of PP1/PP2A Activity and De Novo Gene Expression in Anhydrobiotic Survival in a Tardigrade, Hypsibius dujardini, by Chemical Genetic Approach.
Koyuki Kondo, Takeo Kubo, Takekazu Kunieda
PloS one. 10(12), e0144803 (2015).
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J-8
Triptolide
MNS
Cantharidic Acid

がん微小環境を標的とする化合物の発見

利用者 名古屋大学
医学部附属病院血液内科
早川文彦先生
内容 抗癌剤の開発は腫瘍細胞に体外で化合物ライブラリを添加し、増殖抑制効果の有るものをスクリーニングする手法が一般的である。腫瘍細胞としては、細胞株が用いられるが、これは腫瘍細胞の中でも特別に増殖特性の強い細胞に様々に手を加えることで体外培養を可能にした細胞であり、これを用いたスクリーニングは、微小環境非依存的な増殖を標的にした作用機序を持つ薬剤を選別するスクリーニングである。しかし実際の癌細胞は通常体外では生存できず、生体内の微小環境依存的に生存/増殖する細胞であり、多くの場合細胞株より増殖速度が遅い。既存の抗癌剤の多くが細胞周期依存性の作用機序を持ち、微小環境を標的とせず、結果として細胞周期回転の遅い腫瘍細胞、特に癌幹細胞に効果が低いことも、こうしたスクリーニングシステムの問題に起因する可能性がある。こうした問題点への解決策としてprimaryの腫瘍細胞を用いたスクリーニングが理想的であるが、通常primary細胞の体外培養は困難である事、細胞を自由なタイミングで用意できない事などからスクリーニングに用いる事はできなかった。
我々は免疫不全マウスにprimary腫瘍細胞を移植することによりprimary細胞の形質を維持したまま腫瘍細胞を増殖させるモデル(patient-derived xenograft: PDX)をリンパ腫において作成し、これから得られたPDX細胞を用いたスクリーニングシステムを開発した(PDXスクリーニング)。PDX細胞を必要に応じてマウス体内より採取し、Fibroblastic reticular cell(FRC)細胞株BLS4との共培養で、マウス体外で培養する。これに化合物ライブラリを添加し、イメージアナライザーを用いてリンパ腫死細胞数を選択的に計測する事で微小環境依存性増殖を抑制する化合物を探索した。薬理活性既知の化合物ライブラリ(2613種)を用いたスクリーニングを行い、BLS4によるリンパ腫細胞の生存支持を抑制する作用のある候補薬物としてPyruvinium Pamoate (PP)を発見した。PPは体外培養系、及びマウスモデルにおいて高い抗腫瘍活性を示し、その作用機序は微小環境による腫瘍細胞生存支持機能を阻害するものであった。このシステムにより、従来のスクリーニングではピックアップできなかったユニークな候補化合物を発見し、微小環境が癌細胞の生存を支持する新たな機序が発見できる可能性がある。
成果掲載誌 Discovery of a drug targeting microenvironmental support for lymphoma cells by screening using patient-derived xenograft cells.
Keiki Sugimoto, Fumihiko Hayakawa, Satoko Shimada, Takanobu Morishita, Kazuyuki Shimada, Tomoya Katakai, Akihiro Tomita, Hitoshi Kiyoi & Tomoki Naoe.
Scientific Reports 5, 13054 (2015).
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Pyrvinium pamoate

ストレプトアビジンに結合する新規小分子

利用者 東京大学
大学院薬学系研究科
寺井琢也先生
内容 放線菌の一種が作るstreptavidinというタンパク質は、水溶性ビタミンの一種であるビオチンという化合物と選択的に結びつくことが知られています。この結合は、自然界に存在するタンパク質とその結合分子(リガンド)の相互作用としては最も強力なものと考えられていて、これまで多くの研究の対象となってきました。また実用的な意味でも、両者はタンパク質と他の化合物(DNA、金属基盤、高分子ポリマーなど)を結びつける「瞬間強力接着剤」として、生物学研究や体外診断において幅広く利用されてきました。ただ、天然にあるビオチンは一度streptavidinに結合すると引き剥がすことが極めて難しいため、「ポストイット」や「マジックテープ」のように何度でも付け外しができる、新しいリガンドの開発も求められていました。そこで私たちは、東京大学創薬機構が持っていた約16万種類(当時)の化合物をスクリーニングすることにより、今までに知られているビオチンやその仲間(アナログ)とは違う形を持つ新しいリガンドを発見しようと考えました。この研究のために私たちが新たに立ち上げたスクリーニングシステムを使って実際に実験を行ったところ、期待通り4つの化合物を得ることに成功しました。その中の一つは特に有望な活性を持っていたので、タンパク質との結合メカニズムを詳しく調べると共に、化学合成によって更に使いやすい分子を作ることも行いました。このようにして得た化合物(ALiS)を細胞に作用させたところ、細胞の中に存在しているstreptavidinに速やかにALiSが結合し、かつ細胞外の培養液を交換するとその結合が外れることが確かめられました。この「付け外し」は繰り返し行うことができます。この研究を更に進めることにより、細胞の中のタンパク質のはたらきを自由にコントロールしたり、特定の分子を必要なときに体内に放出したりするシステムが作れるようになる可能性があります。
成果掲載誌 Artificial Ligands of Streptavidin (ALiS): Discovery, Characterization, and Application for Reversible Control of Intracellular Protein Transport.
Takuya Terai, Moe Kohno, Gaelle Boncompain, Shigeru Sugiyama, Nae Saito, Ryo Fujikake, Tasuku Ueno, Toru Komatsu, Kenjiro Hanaoka, Takayoshi Okabe, Yasuteru Urano, Franck Perez, and Tetsuo Nagano.
J. Am. Chem. Soc., 137 (33),10464-10467 (2015).
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ALiS-1

細胞競合力を促進する化合物

利用者 北海道大学
遺伝子病制御研究所 分子腫瘍分野
藤田恭之先生
内容  がん発生の超初期段階において、がんはがん遺伝子やがん抑制遺伝子の変異が正常上皮細胞内で生じることによって起こります。このがん変異細胞は正常細胞に囲まれながら発達していきます。私たちのこれまでの研究では、正常細胞とがん変異細胞の間で「細胞競合」が生じ、正常細胞に囲まれた変異細胞は管腔側へ押し出されるか細胞死を引き起こし、細胞層から排除されることを見つけました。本研究では、この正常細胞とRas変異細胞の間で起こる細胞競合に注目し、「細胞競合力」を促進する低分子化合物のハイスループットスクリーニングを行いました。
私たちは、イヌ腎臓尿細管上皮(MDCK)細胞を正常細胞として、テトラサイクリン誘導性GFP標識Rasを恒常的に発現するMDCK細胞を変異細胞として用いました。これに化合物ライブラリー(約2,600化合物)を同時添加し、テトラサイクリンによって誘導されるGFP-Rasの変化を変異細胞の影響として調べました。GFP強度の低下、毒性の有無、混合培養特異的作用などを考慮した結果、このライブラリーから1つの化合物を選択しこれをVC1と名付けました。
VC1は長期培養で正常細胞に対して毒性を示したことから、私たちはさらに化合物データベースからVC1に構造的に類縁な化合物を10種類見出し、VC1と同等の効果以上で毒性が低い化合物を1つ選択しVC1-8と名付けました。このVC1-8はVC1と同様に細胞非自律的にGFPを低下させるだけでなく長期培養でも正常細胞に対して毒性を示しませんでした。一方で正常細胞に囲まれたRas変異細胞に対しては細胞死を促進させることがわかりました。また、VC1-8はSrc変異細胞のようなRas以外の変異細胞に対してはこの効果を示さないのに対し、ヒト由来のRas変異細胞でも混合培養特異的に排除作用があることがわかりました。
以上のことから、VC1-8はRas変異細胞に対する細胞競合力を促進させる効果を持つ全く新規の作用を持つ化合物で、正常細胞にはほとんど影響を与えないことから副作用の少ない将来の抗がん剤となり得る可能性を秘めていることがわかりました。
成果掲載誌 The cell competition-based high-throughput screening identifies small compounds that promote the elimination of RasV12-transformed cells from epithelia.
Hajime Yamauchi, Takanori Matsumaru, Tomoko Morita, Susumu Ishikawa, Katsumi Maenaka, Ichigaku Takigawa, Kentaro Semba, Shunsuke Kon and Yasuyuki Fujita.
Scientific Reports, 5, 15536 (2015).
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VC1s_1
VC1s_2
VC1s_3
VC1s_4
VC1s_5
VC1s_6
VC1s_7
VC1s_8
VC1s_9

バクテリア細胞分裂に関与するFtsZタンパク質の二量体化阻害剤

利用者 北海道大学
大学院先端生命科学研究院先端細胞機能科学分野
金城政孝先生
内容 バクテリアの細胞分裂には複数のタンパク質が協働していますが、その中でも重要な働きをするタンパク質にFtsZがあります。細胞分裂時にFtsZは単量体から二量体、多量体を経て、細胞膜内側につながれた繊維状の環状構造を細胞の中央部分につくります。最終的に、この繊維が収縮することで、細胞はくびれるように分裂します。したがって、このFtsZタンパク質が二量体、多量体になることを阻害することができれば、細胞分裂できなくなり、細胞が増殖できなくなります。つまり、FtsZタンパク質の二量体を阻害する化合物は新規抗生物質としての「新薬の種」になり得ます。
そこで、本研究では新規抗生物質としての「新薬の種」になる化合物を見つけるために、コンピューターシミュレーションによるバーチャルスクリーニングと蛍光相互相関分光法(Fluorescence cross-correlation spectroscopy, 以下FCCS)を用いた化合物スクリーニング法を確立しました。FCCSとは2色の蛍光を観察することで、分子の動きや分子間相互作用を定量化できる蛍光イメージング手法の一つです。私たちはFCCSを用いて、正確に分子間相互作用を検出するためにFtsZタンパク質を半分に分割し、それぞれに2種類の蛍光タンパク質融合体(FtsZ-N末端-緑色蛍光タンパク質とFtsZ-C末端-赤色蛍光タンパク質)として発現精製しました。そして、これらのタンパク質はGTP存在下で再現性良く二量体化することがFCCS測定から確認されました。
次にこれらのFtsZタンパク質の二量体化を阻害する化合物を探すためにバーチャルスクリーニングを行いました。まず、X線構造解析から得られていたFtsZの立体構造をもとに、コンピューターシミュレーションでFtsZに結合できそうな化合物を約21万種類の東京大学創薬機構化合物ライブラリーから絞り込み、495種類の化合物を選出しました。そして、1次スクリーニングとしてその495種類の化合物の二量体化阻害効果をFCCSにより検定しました。その結果、495種類の化合物のうち、有意にFtsZタンパク質の二量体化を阻害する化合物が28種類見つかりました。さらにこの28種類の化合物に似た構造をもつ化合物をコンピューターを用いた類似構造検索により化合物ライブラリーから選び出し、888種類が候補として選出されました。そして、FCCSによる2次スクリーニングを行い、最終的に888種類の化合物のうち、有意にFtsZタンパク質の二量体化を阻害する化合物が71種類見つかりました(図2)。 71種類の化合物のうち、二量体化阻害効果が高かった6種類の化合物について、表面プラズモン共鳴法(Surface plasmon resonance:SPR)を用いて、化合物とFtsZ間の特異的な相互作用を確認しました。また、この6種類について、抗菌作用を確かめたところ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA、一般的に多剤耐性を示す黄色ブドウ球菌)を含む黄色ブドウ球菌に対し、抗菌作用を持つ化合物が最終的に1種類みつかりました。
黄色ブドウ球菌は種々の抗生物質に対する耐性を獲得しやすい性質があり,多剤耐性菌として院内感染拡大の原因となっています。今回見つかった化合物はあくまで抗生物質としての「新薬の種」であり、実際の薬として用いるにはさらなる研究開発が必要ですが、多剤耐性菌に対して反撃の糸口となる化合物であると期待しています。
また、私たちが開発した方法はこれまで定量的なスクリーニングが難しかった「多量体を形成するタンパク質」に対して応用可能です。すなわち、神経細胞内で発生するタンパク質の凝集体(多量体)が原因で生じる神経変性疾患、たとえばアルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬の発見にも役立っていくと期待されます。
成果掲載誌 Screening for FtsZ Dimerization Inhibitors Using Fluorescence Cross-Correlation Spectroscopy and Surface Resonance Plasmon Analysis.
Shintaro Mikuni, Kota Kodama, Akira Sasaki, Naoki Kohira, Hideki Maki, Masaharu Munetomo, Katsumi Maenaka, Masataka Kinjo.
PLoS ONE 10(7): e0130933.
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ショウジョウバエのグルタチオンS-転移酵素阻害剤

利用者 筑波大学
生命環境系
丹羽隆介先生
内容  グルタチオンS-転移酵素(GST)ファミリーは、ほぼ全ての生物に存在し、内在性物質の生合成や外来毒物の解毒などに広範な役割を果たします。近年では、GST 酵素活性の上昇とがんの悪性化にも関連があることが注目されており、GST 酵素活性を阻害する化合物は創薬シーズとしても重要視されています。今回我々は、GSTの酵素活性を簡便かつ高感度に測定することを可能とする新規蛍光プローブ 3,4-DNADCF を報告しました。3,4-DNADCF を利用することによって、GST酵素活性に対する阻害剤のハイスループットスクリーニングが短期間で実現可能となります。実際我々は、創薬機構のコアライブラリーを用いて、ショウジョウバエのステロイドホルモン生合成を担う GST(Noppera-bo)に対する阻害剤を発掘することに成功しました。同定された物質の1つは脊椎動物の女性ホルモンβ-エストラジオールであることも併せて報告しました。
成果掲載誌 A practical fluorogenic substrate for high-throughput screening of glutathione S-transferase inhibitors.
Yuuta Fujikawa, Fumika Morisaki, Asami Ogura, Kana Morohashi, Sora Enya, Ryusuke Niwa, Shinji Goto, Hirotatsu Kojima, Takayoshi Okabe, Tetsuo
Nagano and Hideshi Inoue.
Chem. Commun.,51, 11459-11462 (2015)
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beta-Estradiol

ステロイド検出用MALDI-MSマトリクス

利用者 産業技術総合研究所
健康工学研究部門
茂里康先生
内容  ポストゲノムのニーズとして、タンパク質、糖質、脂質等の生体分子や、薬物代謝物等を簡便に検出する手法の必要性が高まっている。質量分析法はこれらのニーズを満たす測定法であるが、機器のメンテナンス及び操作の複雑さから敬遠されて来た経緯がある。しかし田中耕一先生がノーベル賞を授与された事でも有名になった、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)は、迅速・簡便・高感度という三拍子揃った特徴を有する、ソフトイオン化法である。その結果、MALDI-MSは基礎研究に留まらず、臨床診断等への展開が期待されている。しかし万能の様に見えるMALDI-MSでも、測定には必ず分子量200前後のマトリックスが必要であり、(i)マトリックス由来のピークが邪魔をして、低分子化合物の分析には向いていない、(ii)糖質等の生体分子に対してイオン化しにくい、(iii)高分子量のタンパク質に対しても感度や分解能が低い等の欠点を有する。そこで既存の概念にとらわれずに、一からMALDI-MSのマトリックスを探索する事こそ、あらたなブレークスルーをもたらす戦略であると確信した。そこでペプチド及び低分子化合物(テストステロン)測定試料と東京大学創薬オープンイノベーションセンターのコア化合物ライブラリー(約1万化合物)を用いて、MALDI-MSマトリックス候補のスクリーニング(計2回)を行ったところ、チオフェン骨格を有する導電性化合物がMALDI-MSによるペプチド測定の良好なマトリックスとして働き、導電性という新たな概念がマトリックスの機能発揮に重要であることを発表した(論文Eur. J. Mass Spectrom., 19, 29-37, 2013)。またスクリーニングの結果、ヒドラジン・ヒドラジド化合物がシックハウスガスと縮合反応・誘導体化し、MALDI-MSマトリックスとしてさらに機能し、ガス状分子をMALDI-MSで直接検出出来る事を見いだした(論文J. Mass Spectrom., 21, 79-90, 2015)。さらに、ヒドラジン・ヒドラジド化合物について、各種カルボニル基を有するステロイドホルモンを測定試料としてMALDI-MS測定を実施した結果、ヒドラジド・ステロイド縮合複合体、その断片化合物が、正イオンモードで、高感度に検出できることを確認している。つまりステロイド等のイオン化しにくい生体分子でも、ヒドラジン・ヒドラジド等の誘導体化試薬が、誘導体化と脱離イオン化補助剤の両方の機能を有し、MALDI-MSの反応性マトリックスとして機能することが判明した。
MALDI-MSの最大の欠点は、使用できるマトリックスの種類が限られることであり、新たなマトリックスを求める需要は極めて強い。しかし、MALDI-MSの脱離イオン化機構について、その理論は主に推定に基づき、有機化合物のモデリング計算などの手法による新規マトリックスの開発は不可能に近い。従ってこの様なユニークなアプローチにより、これまでの欠点を補完する高機能化マトリックスが開発されれば、MALDI-MSが用いられて来なかった、医療現場、環境分析、ドーピング検査等の分野に多くのビジネスチャンスを生み出すことが期待できる。
成果掲載誌 マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)の現状とその展望.
茂里康, 中田誠, 絹見朋也.
生物工学 第93巻, 307-308 (2015)
成果掲載誌 Hydrazide and hydrazine reagents as reactive matrices for matrix-assisted laser desorption/ionization mass spectrometry to detect steroids with carbonyl groups,
Yasushi Shigeri, Akikazu Yasuda, Masamichi Sakai, Shinya Ikeda, Ryuichi Arakawa, Hiroaki Sato and Tomoya Kinumi.
Eur.J. Mass Spectrom. 21, 79-90 (2015)

HER2のダウンレギュレーションを誘導する化合物

利用者 東京大学
大学院医学系研究科 脳神経医学専攻 神経生物学教室
浅沼大祐先生
内容 ヒト上皮成長因子受容体(HER2)は卵巣がんや乳がんなどで過剰発現が認められ、がん患者の予後の不良と強い相関がある。がんにおけるHER2の発現量を減少させること(ダウンレギュレーション)はがんの悪性化に関わるHER2シグナルを抑える有効な手段であり、安価で抗がん効果が高い低分子化合物をベースとした創薬が期待されている。本研究では、近年申請者らが開発した蛍光プローブの応用を基に、HER2のダウンレギュレーションを高感度かつ高特異的に評価可能なハイスループットスクリーニング手法を開発した。本手法を用いて約155,000種類の低分子化合物についてスクリーニングを実施した結果、HER2のダウンレギュレーションを誘導する化合物(3種類)の特定に成功した。本研究で提案・確立したスクリーニング手法は、その基本概念はHER2以外の病因関連受容体にも応用可能であり、受容体のダウンレギュレーションを誘導する薬剤を探索する有効な手段になると考えられる。
成果掲載誌 High-Throughput Screening System To Identify Small Molecules That Induce Internalization and Degradation of HER2.
Masayuki Isa, Daisuke Asanuma, Shigeyuki Namiki, Kazuo Kumagai, Hirotatsu Kojima, Takayoshi Okabe, Tetsuo Nagano and Kenzo Hirose. ACS Chemical Biology, 9 (10), 2237-2241 (2014)
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hers2
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CREBリン酸化阻害剤の探索

利用者 富山大学
大学院医学薬学研究部分子神経科学講座
石本哲也先生
内容 cAMP response element binding protein (CREB)は、記憶形成や精神神経疾患において重要な働きをする転写因子である。CREBはリン酸化されることによって、 転写活性が上昇することがすでに知られている。我々はホタル発光蛋白質と培養細胞を用いて、CREBリン酸化を阻害する化合物を探索する方法を開発した。この 方法では、CREBリン酸化を検知し、発光上昇を呈するプローブ蛋白質を培養細胞に発現させ、化合物を各ウェルに加える。もし化合物が、CREBリン酸化もしくは CREBリン酸化の上流の酵素を阻害する場合、人工的にCREBリン酸化を誘導する刺激を与えても発光が上昇しない。この技術を利用して、2400種類の化合物の中か らCREB蛋白質のリン酸化経路を抑制する化合物を探索し、候補化合物1種類を絞り込むことに成功した。この化合物は、解析の結果CREBリン酸化の上流のアデニ ル酸シクラーゼの活性を阻害することがわかった。
成果掲載誌 Discovery of Novel Adenylyl Cyclase Inhibitor by Cell-Based Screening.
Hiroki Mano, Tetsuya Ishimoto, Takuya Okada, Naoki Toyooka, Hisashi Mori.
Biol. Pharm. Bull. 37, 1689-1693 (2014)
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compound1
compound1

植物矮化誘導する化合物探索

利用者 秋田県立大学
応用生物科学科
王敬銘先生
内容 植物の矮化を含む植物成長制御技術は、農業生産において不可欠な技術である。本研究では新規植物矮化誘導物質を探索するため、シロイヌナズナの胚軸伸長阻害活性を指標とする化合物の植物矮化誘導活性検定系を用いて、東京大学創薬イノベーションセンターのコアライブラリーをスクリーニングした。2,5-ジメトキシベンゼンスルホンアミド(BSA-1)は植物矮化誘導活性を示し、そのIC50 は約 0.35 ± 0.05μMであることを明らかにした。また、BSA-1の植物矮化誘導活性とジベレリンおよびブラシノステロイド生合成阻害活性との関連を調べた結果、BSA-1は両植物成長ホルモンの生合成を阻害しないことを判明した。さらに、市販されているBSA-1の類縁体を用いて、この系統の化合物の活性発現に必要な化学構造の特徴について解析した。
成果掲載誌 Discovery of a new lead compound for plant growth retardants through compound library screening
Keimei Oh, Tadashi Matsumoto, Tomoki Hoshi, Yuko Yoshizawa, Journal of Pesticide Sciences 39,159-161 (2014).
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BSA-1
BSA-1

炎症時に活性化される酵素LCPAT2阻害剤の探索

利用者 東京大学
医学系研究科リピドミクス社会連携講座
清水孝雄先生
内容 血小板活性化因子(PAF)は、強力な生理活性リン脂質であり、喘息を含むアレルギー疾患や急性呼吸促迫症候群、敗血症等さまざまな呼吸器関連疾患に関与することが知られている。PAFはGタンパク質共役型受容体であるPAF受容体(PAFR)を介してシグナルを細胞内へ伝える。PAF生合成酵素は2種類同定されている(LPCAT2とLPCAT1)。我々はPAF関連疾患を対象とした、より副作用の少ない治療薬候補が見つかる可能性をもとめ、炎症時に活性化されるLCPAT2をターゲットとして、約17万化合物をスクリーニングした。その結果、LPCAT1に比べてLPCAT2を選択的に阻害する化合物が複数同定された。これらは、治療薬候補となるだけでなく、生体内での脂質代謝におけるLPCAT2の役割解明の一端を担うことが期待される。
成果掲載誌 Selective inhibitors of a PAF biosynthetic enzyme lysophosphatidylcholine acyltransferase 2
Megumi Tarui, Hideo Shindou, Kazuo Kumagai, Ryo Morimoto, Takeshi Harayama, Tomomi Hashidate, Hirotatsu Kojima, Takayoshi Okabe, Tetsuo Nagano, Takahide Nagase, Takao Shimizu, J. Lipid Res., 55, 1386-1396 (2014).
化合物
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TSI-01 & TSI-02

アルデヒド検出に有用な質量分析用マトリクスの探索

利用者 産業技術総合研究所
健康工学研究部門
茂里康先生
内容 ポストゲノムのニーズとして、タンパク質、糖質、脂質等の生体分子や、薬物代謝物等を簡便に検出する手法の必要性が高まっている。質量分析法はこれらのニーズを満たす測定法であるが、機器のメンテナンス及び操作の複雑さから敬遠されて来た経緯がある。しかし田中耕一先生がノーベル賞を授与された事でも有名になった、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)は、迅速・簡便・高感度という三拍子揃った特徴を有する、ソフトイオン化法である。その結果、MALDI-MSは基礎研究に留まらず、臨床診断等への展開が期待されている。しかし万能の様に見えるMALDI-MSでも、測定には必ず分子量200前後のマトリックスが必要であり、(i)マトリックス由来のピークが邪魔をして、低分子化合物の分析には向いていない、(ii)糖質等の生体分子に対してイオン化しにくい、(iii)高分子量のタンパク質に対しても感度や分解能が低い等の欠点を有する。そこで既存の概念にとらわれずに、一からMALDI-MSのマトリックスを探索する事こそ、あらたなブレークスルーをもたらす戦略であると確信した。そこでペプチド及び低分子化合物(テストステロン)測定試料と東京大学創薬オープンイノベーションセンターのコア化合物ライブラリー(約1万化合物)を用いて、MALDI-MSマトリックス候補のスクリーニング(計2回)を行ったところ、チオフェン骨格を有する導電性化合物がMALDI-MSによるペプチド測定の良好なマトリックスとして働き、導電性という新たな概念がマトリックスの機能発揮に重要であることを発表した(論文Eur. J. Mass Spectrom., 19, 29-37, 2013)。またスクリーニングの結果、ヒドラジン・ヒドラジド化合物がシックハウスガスと縮合反応・誘導体化し、MALDI-MSマトリックスとしてさらに機能し、ガス状分子をMALDI-MSで直接検出出来る事を見いだした(論文J. Mass Spectrom.印刷中)。さらに、ヒドラジン・ヒドラジド化合物について、各種カルボニル基を有するステロイドホルモンを測定試料としてMALDI-MS測定を実施した結果、ヒドラジド・ステロイド縮合複合体、その断片化合物が、正イオンモードで、高感度に検出できることを確認している。つまりステロイド等のイオン化しにくい生体分子でも、ヒドラジン・ヒドラジド等の誘導体化試薬が、誘導体化と脱離イオン化補助剤の両方の機能を有し、MALDI-MSの反応性マトリックスとして機能することが判明した。  MALDI-MSの最大の欠点は、使用できるマトリックスの種類が限られることであり、新たなマトリックスを求める需要は極めて強い。しかし、MALDI-MSの脱離イオン化機構について、その理論は主に推定に基づき、有機化合物のモデリング計算などの手法による新規マトリックスの開発は不可能に近い。従ってこの様なユニークなアプローチにより、これまでの欠点を補完する高機能化マトリックスが開発されれば、MALDI-MSが用いられて来なかった、医療現場、環境分析、ドーピング検査等の分野に多くのビジネスチャンスを生み出すことが期待できる。
成果掲載誌 Hydrazide and hydrazine reagents as reactive matrices for MALDI-MS to detect gaseous aldehydes
Yasushi Shigeri, Shinya Ikeda, Akikazu Yasuda, Masanori Ando, Hiroaki Satob and Tomoya Kinumi.
J. Mass Spectrom 49, 742-749 (2014)

新規抗菌薬の創製

利用者 株式会社ゲノム創薬研究所
管理部門
関水信和 様
内容 化合物ライブラリーより、抗菌活性を示す新規骨格を見いだし、その有機合成展開を行いました。その結果、より毒性が低く、抗菌活性が高い化合物の創出に成功しました。合成した化合物は、多剤耐性のMRSAを含むグラム陽性菌に対して抗菌活性を示しました。本成果は、Journal of Antibioticsに掲載された。
成果掲載誌 Structure-activity relationship study of novel iminothiadiazolo-pyrimidinone antimicrobial agents.
Atmika Paudel, Keiichi Kaneko, Ayako Watanabe, Matsunaga Shigeki, Kanai Motomu, Hiroshi Hamamoto, and Kazuhisa Sekimizu.
J Antibiot 66, 663-667 (2013)
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0002-04-KK
0002-04-KK

miRNA前駆体に結合する化合物

利用者 大阪大学
産業科学研究所
中谷和彦先生 / 村田亜沙子 先生
内容 当研究室では,RNAに結合して消光し,リガンドの結合により追い出されて蛍光を発する蛍光指示薬(X2SS)を開発した. この蛍光指示薬を用いて,10種類のマイクロRNA前駆体に対して結合する小分子化合物の探索を行った. 東京大学創薬オープンイノベーションセンターのCore Libraryに含まれる9600化合物をスクリーニングした結果,4つのヒット化合物が得られた.
成果掲載誌 Fluorescent indicator displacement assay of ligands targeting ten microRNA precursors.
Asako Murata, Yasue Harada, Takeo Fukuzumi, and Kazuhiko Nakatani.
Bioorg. Med. Chem. 21, 7101-7106 (2013)
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hits
hits

Eカドヘリン発現を上昇させる化合物

利用者 東京薬科大学
生命科学部ゲノム情報学研究室
深見希代子先生 / 佐藤礼子先生
内容 Eカドヘリン発現を指標としてCore library のスクリーニングを行った結果、大腸癌、メラノーマ細胞においてEカドヘリンの発現を上昇させる化合物を同定した。それらの化合物のうち2つは大腸癌細胞の運動能・浸潤能を抑制し、3つはメラノーマ細胞の運動能・浸潤能を抑制した。このうち2つの化合物は非がん細胞の生存率にほとんど影響を及ぼさなかったことから、新規の抗がん剤としての開発が期待される。
成果掲載誌 Identification of Novel Small Compounds that Restore E-cadherin Expression and Inhibit Tumor Cell Motility and Invasiveness.
Tamaki Hirano, Reiko Satow, Asami Kato, Mana Tamura, Yumi Murayama, Hideyuki Saya, Hirotatsu Kojima, Tetsuo Nagano, Takayoshi Okabe, Kiyoko Fukami.
Biochem. Pharmacol. 86, 1419-1429 (2013)
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白血病再発の主原因「白血病幹細胞」を標的とした低分子化合物を同定

利用者 独立行政法人 理化学研究所
CLST 創薬タンパク質解析基盤ユニット
田仲 昭子先生
内容 理化学研究所は、東京大学・創薬オープンイノベーションセンター(OCDD)から分与を受けた低分子化合物を活用して、白血病幹細胞を標的とした創薬研究に重要な成果をあげた。理研、創薬・医療技術基盤プログラム(DMP)では、インシリコスクリーニングによってヒトHCK酵素を阻害する候補化合物を選択し、これら化合物の一部を東大OCDDから入手し、HCK酵素に対する阻害活性を測定したところ、OCDD由来化合物に阻害活性を見出した。理研では、本化合物をツール化合物として外部より購入し、ヒト白血病幹細胞致死効果を確認し、また、HCKタンパク質と本化合物の共結晶構造解析を実施した。理研DMPではさらに研究開発を進め、化合物RK-20449が、抗白血病薬候補として有望な、強い薬効を持つことを見出した。
成果掲載誌 A Pyrrolo-Pyrimidine Derivative Targets Human Primary AML Stem Cells in Vivo.
Saito Y, Yuki H, Kuratani M, Hashizume Y, Takagi S, Honma T, Tanaka A, Shirouzu M, Mikuni J, Handa N, Ogahara I, Sone A, Najima Y, Tomabechi Y, Wakiyama M, Uchida N, Tomizawa-Murasawa M, Kaneko A, Tanaka S, Suzuki N, Kajita H, Aoki Y, Ohara O, Shultz LD, Fukami T, Goto T, Taniguchi S, Yokoyama S and Ishikawa F.:
Science Translational Medicine, 5, 181ra52(2013)
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RK-20449
RK-20449

抗ポリオウイルス活性を持つ化合物の探索2

利用者 国立感染症研究所
ウイルス第二部第二室
有田 峰太郎先生
内容 WHOポリオ根絶計画における共同研究として、東京大学の有する化合物ライブラリーの一部(72,000化合物)を用いた抗ポリオウイルス活性を持つ化合物の探索を行い、ポリオウイルスの複製に必要とされる宿主因子フォスファチジルイノシトール4リン酸キナーゼ(PI4KB)に対する特異的阻害剤T-00127-HEV1を同定し、これまでに報告した。T-00127-HEV1に対するポリオウイルスの耐性変異は、既知の抗ポリオウイルス化合物であるエンビロキシムに対する耐性変異(ウイルスタンパク3AのAla70Thr変異)と同一であり、実際エンビロキシムは非特異的PI4KB阻害剤であることが後ほど判明した。興味深いことに、この同じ耐性変異を誘導するが、PI4KB活性を阻害しない化合物AN-12-H5を、異なる化合物ライブラリーから我々は以前同定していたが、その標的および作用機序は不明であった。今回の研究では、未検討だった残りの化合物ライブラリー(59,200化合物)を用いて抗ポリオウイルス化合物の探索を行った。結果、3つの候補化合物を同定した。このうち2つはPI4KB阻害剤であったが、残り1つは抗PI4KB阻害活性を持たず、かつ上記の変異が耐性を与えるAN-12-H5と同様の性質を示す化合物(T-00127-HEV2と命名した)であった。Target Identification by siRNA Sensitization (TISS)法により、AN-12-H5およびT-00127-HEV2の阻害活性を上昇させる宿主遺伝子を探索し、標的として宿主遺伝子OSBP family Iを同定した。OSBPに対する高親和性リガンドとして知られている25-ハイドロキシコレステロールは、抗ポリオウイルス活性を持ち、かつ上記の耐性変異を持つウイルスが耐性を示すことから、AN-12-H5およびT-00127-HEV2と同じ群に含まれる抗ポリオウイルス化合物であることが判明した。また、T-00127-HEV1もしくはT-00127-HEV2処理により、宿主細胞のゴルジ体におけるフォスファチジルイノシトール4リン酸が検出されなくなった。
これらの結果から、AN-12-H5およびT-00127-HEV2は、OSBP family Iを標的として、フォスファチジルイノシトール4リン酸の産生もしくは蓄積を阻害し、ポリオウイルスの複製を阻害することが示唆された。
成果掲載誌 Oxysterol-binding protein family I is the target of minor enviroxime-like compounds.
Minetaro Arita, Hirotatsu Kojima, Tetsuo Nagano, Takayoshi Okabe, Takaji Wakita and Hiroyuki Shimizu.
Journal of Virology 87(8), 4252-4260 (2013)
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T-00127-HEV2
T-00127-HEV2

質量分析に有用なマトリクスの探索

利用者 産業技術総合研究所
健康工学研究部門
茂里 康先生
内容 タンパク質やペプチド等の生体分子を、質量分析法を駆使して同定する際に、Matrix-assisted laser desorption ionization (MALDI, マトリックス支援レーザー脱離イオン化)法は、今日広く使われている質量分析法である。特に本方法は、田中耕一博士が開発しノーベル化学賞を授与されたことでも有名である。MALDI法は、マトリックスと試料をあらかじめ混合し、窒素レーザーを照射する事により即座に試料混合物をソフトイオン化させ、迅速な分子量測定が可能である。しかしMALDI法において大きく二つの欠点が存在する。一つは、試料とマトリックスの混合物のソフトイオン化のメカニズムについて謎が多いこと。二つは、代表的なマトリックスはシナピン酸、alpha-cyano-4-hydroxycinammic acid (CHCA)等が開発されているが、MALDI法による測定の際にマトリックス自身やそれら由来の分子量ピークが観察され、低分子量(数百以下の)の試料測定が難しい点である。これまで開発されてきたマトリックスは主に1980年代後半から1990年代前半に開発されており、まだ改良の余地が多い。  そこで東京大学創薬オープンイノベーションセンターから化合物ライブラリーを供与して頂き、ペプチドを測定試料として使用して、マトリックスの機能を有する化合物の探索を行った。その結果、硫黄を含む複素環式化合物のチオフェン骨格を含む化合物群がマトリックスとしての機能を有することを見いだした。チオフェン骨格は、色素増感太陽電池に用いられているある種の色素や、導電性高分子の基本骨格でもある。これまでMALDI法のマトリックスとして必要な条件は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等のプロトン供与に関係する官能基の存在、窒素レーザーの波長付近(337nm等)の吸収等が必要不可欠と考えられていたが、新たに導電性という概念も必要ではないかと示唆された。そこで、既存のマトリックスと今回スクリーニングの結果見いだされたチオフェン骨格を含む化合物の導電性を測定した結果、有意な導電性を観察することができた。またチオフェン骨格を含む化合物群の中で、DCBTA(2-[5-(2,4-dichlorobenzoyl)-2-thienyl]acetic acid)が既存のマトリックスであるCHCAと同程度のマトリックス機能を有することも判明した。
成果掲載誌 A thiophene-containing compound as a matrix for matrix-assisted laser desorption/ ionization mass spectrometry and the electrical conductivity of matrix crystals
Akikazu Yasuda, Takayuki Ishimaru, Shogo Nishihara, Masamichi Sakai, Hideya Kawasaki, Ryuichi Arakawa and Yasushi Shigeri.
Eur. J. Mass Spectrom. 19, 29-37 (2013)
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matrix
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インシリコ技術で見出したサポウイルスプロテアーゼ阻害剤

利用者 国立感染症研究所
病原体ゲノム解析研究センター / ウイルス第二部
横山 勝先生 / 岡 智一郎先生
内容 サポウイルスは、ウイルス性食中毒・急性胃腸炎の原因ウイルスであるノロウイルスと同じカリシウイルス科に属する。サポウイルスの複製・増殖にはORF1にコードされているウイルス自身のプロテアーゼが必須である。サポウイルスプロテアーゼは特定のグルタミン酸もしくはグルタミンの直後を切断するが、その基質認識機構の詳細は不明である。これまで、サポウイルスORF1ポリプロテイン中のp70/p60切断部位周辺アミノ酸の変異解析により、少なくともこの部位の切断には、切断点上流4番目のアミノ酸(P4残基)および上流1番目のアミノ酸(P1残基)が重要であることを明らかにしてきた。今回、サポウイルスプロテアーゼの基質認識機構を解析するため、基質が結合したプロテアーゼの分子モデルを構築し、基質結合に関わるプロテアーゼのアミノ酸残基の予測を行った。その結果、P4残基とプロテアーゼのY101が互いにスタッキング構造を形成すること、およびP1 残基とプロテアーゼのK112およびR113などの正に帯電した領域との間で静電相互作用により基質認識を行っていることが示唆された。 サポウイルスプロテアーゼの基質認識に重要な基質側の構造的特徴を持つ化合物は、本来の基質と同様に基質結合部位に結合すると考えられる。本研究により得られた、サポウイルスプロテアーゼの基質認識機構の結果を用いて、プロテアーゼ活性阻害物質のスクリーニングを行った。化合物データベース(約140,000化合物)から、P4に相当する位置に芳香環を持ち、P1に相当する位置に負の電荷を持つ化合物の抽出を試みた。その結果、サポウイルスプロテアーゼ活性阻害物質候補として151化合物を抽出した。これらの化合物の阻害効果の有無を確認するために、化合物存在下における35S標識ORF1ポリプロテインの切断産物パターンを、SDS-PAGEによって解析した。151化合物のうち3化合物において、ポリプロテイン切断に阻害効果が見られた。
成果掲載誌 Structural basis for specific recognition of substrates by sapovirus protease.
Masaru Yokoyama, Tomoichiro Oka, Hirotatsu Kojima, Tetsuo Nagano, Takayoshi Okabe, Kazuhiko Katayama, Takaji Wakita, Tadahito Kanda and Hironori Sato
Front. Microbio. 3:312 (2012).
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ケトステロイド異性化酵素の親和性・特異性創出機構精密解析

利用者 東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリー
河邉昭博先生 / Jose Manuel Martinez Caaveiro先生
津本浩平先生(東大院新領域)
内容 既に広く知られているように、蛋白質における低分子化合物の認識には複数の弱い相互作用を緻密な設計に基づいて配置、構築した強固な相互作用系が必須である。この蛋白質と低分子化合物との相互作用の本質的な理解はより精密な分子デザインを可能とし、特に低分子化合物をスクリーニングする際のバイアス強化が期待される。本研究では結晶構造、機能について既に解析が行われているケトステロイド異性化酵素(KSI)に対して低分子化合物スクリーニングを行うことによって、親和性・特異性創出機構についての詳細な検討を行った。  発現・精製したKSIと分子量・溶解度の観点から選出した低分子化合物ライブラリ(約2000化合物)とのスクリーニングは表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて行った。センサーチップ上にKSIをアミンカップリングにより固定化し、各低分子化合物との結合量を測定することでヒット化合物を選出した。  更に、ヒット化合物の構造類似性を元に絞り込みを行い、等温滴定熱量測定を用いた熱力学的解析及び結晶構造解析から、KSIの親和性・特異性創出機構の原点を追求した。⇒発表ポスターへのリンク
学会発表 第五回バイオ関連化学シンポジウム, 2011.9.12-14
つくば国際会議場「エポカルつくば」

新規蛍光スクリーニング法で得たプロリン異性化酵素(pin1)とシクロフィリンデュアル阻害剤

利用者 東北大学農学系研究科
内田隆史先生
内容 我々が標的分子として注目した、Pin1が属するPPIaseファミリーは、多種類のシクロフィリンとFKBP、および2種類のパルブリン(Pin1とhPar14)の3つのサブファミリーからなる。これらの酵素は多様な機能を有しているが、共通の機能として挙げられるのは、基質となる蛋白質中のプロリン分子のcis/trans構造の異性化を触媒し蛋白質のフォールディングを助けるシャペロンとしての機能である。タンパク質が転写、翻訳されフォールディングするとき、 プロリン部分がcis – ペプチドにならないとうまくフォールディングできない場合があり、多くの場合、プロリンの異性化がタンパク質フォールディングの律速段階となっている。 PPIaseはプロリンのペプチド結合を異性化することで、速やかなフォールディングを助けている。 我々は、以前より、ハイスループットではないが、基本的なPPIaseの活性測定法を確立していた。その方法の基本的な原理は、プロリン異性化酵素の基質となるペプチドがtrans体になったときのみに、特異的にプロテアーゼ活性を示すプロテアーゼとプロリン異性化酵素を組み合わせることで酵素活性を測定しようというものである。プロリン異性化酵素でtrans型になった基質は、プロテアーゼにより切断を受けるが、切り出された配列が蛍光もしくは吸光物質であればその吸光度や蛍光を測定することにより酵素反応を測定できる。 我々は、この測定方法を応用し、1サンプルずつ測定を行う、従来の方法から、96または384ウェルプレート単位で測定を行えるように、浜松ホトニクス社のFDSS (名称の由来はFunctional Drug Screening System) を応用して利用することを試みた。本装置は通常、その名の通り、様々な蛍光プローブに対応した、細胞を利用するCell-Based Assayシステムとして開発され、主に、細胞内のカルシウム動態を、蛍光Dyeを使用することにより測定する装置として、G蛋白質共役型受容体 (GPCR) やイオンチャンネルの測定に使用されている。我々は、本装置の備える機能がPPIaseのスクリーニング系にも応用できると考え、検討を開始した。PPIase非存在下でもcis/transの異性化は平衡反応として、非常に速く進むため、これまでは、酵素非依存的なバックグランドの反応を、低温下で行うことが、酵素活性の測定には必須の条件であった。HTSの場合、アッセイを全て低温で行うには機器ごと低温室に設置して試験を行う必要があるが、そのような条件での使用を保障する機器は少なく、現実的でない。このような状況を打破する為に、室温条件でも測定が可能な試験系を構築することを考えた。その為には、Sub-Second 単位で変化する反応速度の正確な測定が出来る機器が必要であった。これを実現するには、高感度で、時間分解能の高い測定機器であること、処理効率が高く、試験系の精度も高い機器である事等の条件をクリアしなければならない。このような条件を満たす機器ということで候補に上がったのがFDSSであった。FDSSは高感度なCCDカメラを搭載し、plate内の全wellの測定を最小で0.1秒毎に実施することが出来る。また、測定庫内に分注機を備えており、測定中に基質を添加することが可能である為、酵素反応開始直後の非常に速い蛍光値の変化を精度良く観察できる。実際、FDSSを使用してみると、0.5秒おきの測定が可能であり、室温での連続的なプロリン異性化酵素の活性測定が可能になった。また、FDSSは測定機内に備え付けられたCCDカメラにより一度にプレート内の全ウェルの蛍光強度を測定できるため、一般に行われている酵素活性の調節剤探索と同様に、これまで困難と思われていたプロリン異性化酵素の活性調節剤の探索が可能になった。これは、工夫次第でユニークで独創的な試験系が構築できることを示している。実際、この試験系を使って、東大生物制御ライブラリー機構の低分子化合物ライブラリーのHTSを実施したところ、そのヒット化合物からは、Pin1のみならず、サイクロフィリンにも阻害作用を有する新規のDual inhibitor骨格を取得した。また、我々は、分子間相互作用測定装置を用いて基質ペプチドと酵素の結合を特異的に阻害する薬剤を探索する方法も確立しており、ドッキング・スタディを組み合わせた解析により、Pin1阻害薬の結合様式について詳細に検討を進めた。その結果、ヒット化合物の1つであるTME-001はPin1の基質結合部位に基質競合的に結合することが解った。これらの生化学的、生物物理的な薬剤探索法で発見した化合物は、次に、その効果を細胞レベルでも明らかにした。化合物の細胞レベルでの評価はPin1の細胞周期の制御作用を利用して、血清飢餓からの細胞増殖再スタート時におけるTME-001の作用を検討した結果、我々が作成したPin1遺伝子欠損MEF細胞で認められる血清飢餓からの回復の遅れが、TME-001処理細胞で認められた。このことから我々は、細胞試験でもPin1の阻害作用を有する新規のDual inhibitor骨格を取得し、今後の創薬に繋げられる化合物群の取得に至った。
成果掲載誌 A dual inhibitor against prolyl isomerase Pin1 and cyclophilin discovered by a novel real-time fluorescence detection method.
Tadashi Mori, Masafumi Hidaka, Yi-Chin Lin, Ibuki Yoshizawa, Takayoshi Okabe, Shinichiro Egashira, Hirotatsu Kojima, Tetsuo Nagano, Mamoru Koketsu, Mari Takamiya, Takafumi Uchida,
Biochem. Biophys. Res. Commun. 406, 439-443 (2011).
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TIME-001
TIME-001

WHOポリオ根絶計画における共同研究-抗ポリオウイルス活性を持つ化合物の探索-

利用者 国立感染症研究所 ウイルス第二部第二室
有田峰太郎先生
内容 WHOポリオ根絶計画における共同研究として、本機構の有する化合物ライブラリーを用いた抗ポリオウイルス活性を持つ化合物の探索を行った。抗ポリオウイルス化合物は、ポリオ根絶後のワクチン由来株の再流行の制御およびポリオウイルスに慢性感染している患者の根治治療における有効性が期待されている。
WHOポリオ根絶計画における共同研究として、本機構の有する化合物ライブラリーを用いた抗ポリオウイルス活性を持つ化合物の探索を行った。抗ポリオウイルス化合物は、ポリオ根絶後のワクチン由来株の再流行の制御およびポリオウイルスに慢性感染している患者の根治治療における有効性が期待されている。
T-00127-HEV1に対するウイルスの耐性変異を解析したところ、エンビロキシムという既知の抗エンテロウイルス化合物に対するウイルスの耐性変異と同一の変異(ウイルスタンパク3AのAla70Thr変異)がウイルスの耐性に重要であることが明らかとなった。さらに標的が既知の抗エンテロウイルス薬PIK-93(フォスファチジルイノシトール4リン酸キナーゼ(PI4KB)阻害剤)の解析により、PIK-93に対するウイルスの耐性変異もこれらと同一であることが明らかとなり、T-00127-HEV1の標的がPI4KBである可能性が示唆された。
PI4KBを含むフォスファチジルイノシトールキナーゼの活性に対するT-00127-HEV1の阻害活性を解析した結果、T-00127-HEV1はPI4KBに特異的な阻害剤であることが明らかとなった。T-00127-HEV1のウイルス複製阻害効果のエンテロウイルスへの特異性を解析するために、他のRNAウイルスであるC型肝炎ウイルス(HCV)に対する阻害効果を解析したところ、T-00127-HEV1はHCVの複製を全く阻害しなかった。
これらの結果から、T-00127-HEV1はPI4KBを標的とするエンテロウイルス特異的阻害剤であり、有望なリード化合物となる可能性が示唆された。
成果掲載誌 Phosphatidylinositol-4 kinase III beta is a target of enviroxime-like compounds for anti-poliovirus activity, Minetaro Arita, Hirotatsu Kojima, Tetsuo Nagano, Takayoshi Okabe, Takaji Wakita, and Hiroyuki Shimizu, J. Virol. 85, 2364-2372 (2011).
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T-00127-HEV1
T-00127-HEV1

フラグメントライブラリーの測定経験から得たSPR/ITC戦略の実効性と効率的活用法

利用者 東京大学 大学院 新領域創成科学研究科 メディカルゲノム専攻
津本浩平先生
内容 「フラグメントライブラリーの測定経験から得たSPR/ITC戦略の実効性と効率的活用法」フラグメントライブラリーから良質のヒット化合物をSPR(表面プラズモン共鳴)法で見出すためには非特異的吸着の仕組みを理解し制御することが重要です。今回我々はセンサーチップへのタンパク質固定化量が非特異的吸着に大きな影響を及ぼすことを見出しました。またヒット化合物の検証にはITC(等温滴定カロリメトリー)が有用であることを確認しました。
学会発表
  • BIA symposium, 2010.7.16
    東京・品川プリンスホテル
  • DiPIA 2010, 2010.10.17-20
    Pullman Barcelona Skipper Hotel, Barcelona Spain

C型肝炎ウイルス増殖阻害剤

利用者 大阪大学 微生物病研究所
松浦善治先生
内容 日本には2百万人ものC型肝炎ウイルス(HCV)に感染している患者さんがいます。 C型肝炎の治療法も進歩して、半分の患者さんからウイルスを駆除できるようになりましたが、残りの患者さんには有効な治療法がありません。私たちはHCVの感染を高感度に検出できるシステムを開発し、新しい阻害剤の開発を試みました。そして、HCVの増殖を阻止できる活性を持った二つの化合物を見つけることができました。
成果掲載誌 Establishment of an indicator cell system for hepatitis C virus,
Yoshinori Tanaka, Yoshio Mori, Hideki Tani, Takayuki Abe,
Kohji Moriishi, Hirotatsu Kojima, Tetsuo Nagano, Takayoshi Okabe,
Tetsuro Suzuki, Masashi Tatsumi, Yoshiharu Matsuura,
Microbiology and Immunology 54, 206-220 (2010)
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